基本的な考え方
評価実習は、実際に保育を観察し項目をチェックする部分と、結果を持ち寄ってすり合わせをする部分と大きくは二つに分かれます。基本的には1日にまとめて、午前中に観察、午後に検討会というのがオーソドックスなやり方です。
ただ、保育士の仕事は分刻みと言ってもよく、自園であってもなかなか自分のクラスを抜け出して他のクラスの観察に時間を費やすことは難しいものです。その場合は3日程度観察期間に設定して、何度かに分けて観察を行うというやり方をとりましょう。
ポイントは、観察と結果の話し合いが両方必要だということです。また、何回か行うことが「熟達」のためには必要です。何度も行うことで見方が分かり、項目チェックの要領がつかめてくると、その背景にある事象(ものやこと)が見えてくるようになり、それらの関係性が見えるようになります。習うより慣れろ、です。
観察の仕方と留意点
スケールの本(対象クラスの年齢に応じて幼児版あるいは乳児版)、スコア・シート、鉛筆(間違ったら消しゴムで消せるように)を持ちます。クラスの中で、子どもの活動の妨げにならないところで観察をし、スケールを読みながらスコア・シートのチェックボックスにひとつひとつチェックを入れていきます。チェックをして当該項目の評点をだし、各項目のボックスの上にある1から7の数字のところに〇をつけ、評定点とします。
園庭に出ていくこともあるので、外靴は着脱が容易なものにして下さい。
この時、推測で判断するのではなく、現実に起きたこと・あるものに基づいて判断します。事実が観測できない場合は、あとで質問をしてその内容から判断します。項目の順に観察をすすめるのではなく、ページを行きつ戻りつ目の前に起きたことをチェックするのです。ですから、観察を終えた項目については「評定点に〇」もしくは「後で質問のしるし」をつけて、観察を終えていない項目と区別し、観察を終えてクラスを出る時は全項目のチェックを終えていることが求められます。後から「あれはどうだったろう・・・」と思い出すことは至難の業です。
自然な表情を保ち、評定者同士で話をすることは極力避けます。大声で感想を言ったりすることはもってのほかです。子どもに対してはとても危険な状況にない限り、基本的にかかわりません。クラスの先生が気を使って(あるいは自分の緊張をほぐすために)観察に来た先生に挨拶をさせることがありますが、必要ありません。
登園のようすが観察できる時間帯から対象となるクラスに入室し、昼食の様子を観察するくらいまで在室します。登園時の対応、子どもがトイレに行ったとき、これらはその時にしか観察できませんから、ほかのことを観察しているときでもそちらを優先します。少し早めに入室して、部屋の感じをざっとつかんでおくと観察がしやすいです。園外保育に出かけることは、できれば見合わせてもらいます。なぜなら園庭と室内にいるのと異なり、保育者の対応や子どもどうしのやりとりを観察することが難しいからです。
評価実習中の学生(手前)
(この項続く)

観察に入られるのは緊張します。しかも「評価」されるなんて、たまったものではありません。ただし私の経験では、緊張したとしても、見られて100%嫌がる人はいません・・・まあ五分五分か、四分六か七三か、嫌な気持ちと嫌でもない気持ちの割合には差があるかもしれません。
「透明性」とか、「説明責任」とか、いろいろな言葉がありますが、保育が閉ざされた空間ではなく、開かれていることが大切と思います。評価されることと「監視」されることは違います。評価とは「現状の把握」であり「次に打つ手を考える」ためのものです。それは一人で行うよりも、ほかの人との話し合いながら知恵を出し合う方が効果的なのです。新人には新人のフレッシュさやバイタリティがあり、ベテランにはベテランの味や熟練があります。それぞれの保育をオープンにして、共通の尺度を以て事実を吟味することでそれぞれの持ち味も浮き彫りになります。

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