2011年05月31日

保育環境評価スケール・ラウンド1

<埋橋玲子@保育環境評価スケール>
No.1 保育環境評価スケールとは

1 保育の質を測る「ものさし」
 『保育環境評価評価スケール』とは、アメリカで開発された保育の質を測定するスケール(尺度)です。幼児版と乳児版があり、幼児版は2歳半〜5歳、乳児版は0歳から2歳半までの集団保育を対象とします。

 原著は、幼児版が ECERS (読み;エカーズ、Early Childhood Environment Rating Scale の略称)、乳児版が ITERS(読み;イターズ、Infant Toddlers Environment Rating Scale の略称)と称されています。幼児版は、アメリカでの女性の労働市場進出にともなって増加した家庭外保育に対する需要の高まりをその背景として開発されました。1980年に初版のスケールが発行されて以後、多くの調査研究や保育行政、保育者養成と研修、保育の質の向上にと広く用いられるようになり、アメリカ国内で普及しただけではなく、英語圏の諸国に広まり、現在では数か国語に翻訳されて研究用あるいは保育の質の向上のために複数の国々で用いられるようになりました。乳児版は1990年に初版が発行され、現在はともに改訂版が発行されています。他に家庭的保育版、学童保育版があります。

ECERS-R.jpg ECERS ITERS-R.jpg ITERS

 日本では埋橋玲子が幼児版と乳児版を翻訳し、2004年に法律文化社より出版しました。

保育環境評価スケールA幼児版.jpg 幼児版 保育環境評価スケールA乳児版.jpg 乳児版

2 「保育の質」とは
 そもそも保育の質とは何か、何をもって保育の質と呼ぶかについては様々な議論や考え方があります。それにともない、保育の質を測定する尺度も多様です。オール・マイティの尺度は存在しないといってよいでしょう。

 保育環境評価スケールでは(以下、スケール)、集団保育の場が満たすべき、すべての子どもに共通する以下の3つのニーズに注目し、そのニーズにそってどれだけ保育環境が整っているかに注目しました。

   −保護(保険と安全管理)
   −社会的・情緒的発達の保障
   −知的発達の保障

 スケールの意味する「保育環境」は、人的・物的環境の両方を含んでいます。特定のメソッドやカリキュラムを支持するものではありません。どのような保育の場であっても、すなわち日本の状況に照らしていえば、幼稚園・保育所・子ども園などの種別を問わず、集団保育の場において共通する子どものニーズ、整えられるべき保育環境という観点から、対象となった保育室における「保育の質」を、観察可能な「もの」や「こと」から判断しようとするものです。

3 保育環境評価スケールが日本で使えるのか

 文化や社会的背景の異なるアメリカで開発されたスケールが日本で使えるのか、という疑問はもっともでしょう。しかし、子どもの発達のすがたはは文化や社会的背景が異なっても同じであり、どのような社会でも子どもが養育や教育を受ける上で共通する必要な条件があります。安全で快適な保育室や園庭、温かな人間関係、豊かな遊びと学びの広がりなどがその例としてあげられます。スケールは、保育の場で文化や社会の違いを超えた共通点に注目するものです。

 とはいえ、測定に用いられる項目を子細に検討すると、やはりアメリカのものだという違和感をぬぐえない箇所があることもまた、事実です。翻訳にあたっては、あまりに事情が異なる項目と思われ削除した部分がありますが、それは2つの小項目だけです。また、項目の意図を日本の状況に合わせて解釈し、意訳した部分もあります。しかしながら原著者の意図を基本的に尊重しました。なぜならば原型を大切にすることで、他国との保育の比較が可能になるからです。日本の保育を日本の中で見るだけでなく、他国と比較してはじめてわかる、良さあるいは見直すべき点があるからです。それには共通の「ものさし」を用いることで可能になります。

 国の実情に合わせるという点では、イギリスで開発された ECERS-E (エクステンション)があります。ECERS本体はそのままで利用し、プラス・アルファーでイギリスのナショナル・カリキュラムにあわせて開発されました。
ECERS-E 2006.jpg *2006年発行の初版。現在は装丁も変わり、4版が発行されている。

 日本で使うことについての不備を解決するには、日本版のエクステンションの開発によって補えるものであり、これについて取り組んでいる研究グループがあります。これについてはまた機会を改めて紹介します。

 いくつかの不備を超えてなおこのスケールを使う価値は2つあります。1つは「共通のものさしをもって保育を見る」ことの重要性です。2つ目は、このスケールを用いて実際の保育を観察すると、本来なら、なされていなくてはならない基本的な事柄が実はできていなかった、そんな気づきがあるからです。このことについても回を改めて説明をしていきます。

 この回の最後は、スケールの原著者のひとりであるテルマ・ハームス氏の、「スケールの日本語訳の出版に寄せて」という文章からの一部引用で締めくくります;

 これまでスケールの初版、改訂版が多くの国々で英語または最小の修正による翻訳で成功裏に用いられていることは大変興味深いことです。もちろんそれぞれの国には独自の文化と慣習があるにせよ、現代の国々が発展させたい子どもの夕のせいには一連の核があるようです。これらの有能性は出身国においてのみならず、私たち全員を結び付けるような世界的な文化の中で子どもたちが生きていくために必要とされるものです。

ひらめきご参照ください 保育環境評価スケール研究会のHP
posted by うずちゃん at 17:04| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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