2011年06月29日

保育環境評価スケール/項目解説/個人的な日常のケア/<幼児版13><乳児版10>保健

埋橋玲子@保育環境評価スケール
項目解説/ 個人的な日常のケア/ <幼児版13><乳児版10>「保健」

ここでは保健衛生に関する全般的なことを対象としますが、「排泄/おむつ交換」「食事/間食」「午睡」に関してはそれぞれの項目で扱い、この項目ではこれらについては評定の対象としません。

1 幼児版13・乳児版10「保健」について
この項目では、以下の点を保育の質として重要であると考えています。

−病原体の広がりが最小限に抑えられる(感染防止のための清拭、保護者への情報提供など)。
−子どもに対し保健上適切な対応がなされる(気温に合わせて衣服の調節、虫歯予防など)。
−発達段階に応じ、子ども自身による保健的な行動を促す。

背後にある考え方は以下のようなものです。
まず多くの子どもやおとなが行き交う場所としての保育の場では、感染症のもとになる病原体を「持ち込まない」「広げない」「持ち出さない」の三原則を徹底させることが何よりも大切です。感染症は、場合によっては入院など子ども自身に重大な事態を発生させる恐れがあります。保護者が働いている場合、子どもが入院したり自宅で療養しなくてはならなかったりする事態は、保護者の就労を脅かすことにもなりかねません。
病気の中には避けられないものもありますが、避けることのできるものについては避ける最大限の努力をしなくてはならないでしょう。
おとなが感染症防止のために保健的な手段をとると共に、子ども自身が保健的な習慣を身につけていくことも大切です。子どもが保健的な状態に保たれること(はなが拭かれる、適切な服装をさせるなど)、保育者が保健的なよいモデルになること(手洗いをするなど)、子ども自身が保健的な知識を得て実践できるようにすること(手洗いの仕方や咳をするときのエチケットを知らせる、虫歯予防の話をする、手洗いの手順を図示するなど)、などがあげられます。

足台.jpg 1歳児クラスにて


2 項目「保健」の評定のポイント

保育室内外が衛生的に保たれているかどうかを観察します。特に手洗いがどのように行われているのかに注目します。登園時や外遊びから戻った時、汚れる遊びをした後、体液に触った時、不衛生なものに触った時など、手洗いが必要な場面を前もってリストアップしておき、手洗いが実行されているかどうかをチェックするのも一つの方法です。


3 幼稚園教育要領・保育所保育指針との参照
【幼稚園教育要領】
第2章 保育のねらいおよび内容/健康 2 内容

(7)身の回りを清潔にし、衣類の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。
(9)自分の健康に関心をもち、病気の予防などの必要な活動を進んで行う。

【保育所保育指針】
◎第3章 保育の内容
1 保育とねらいの内容
(1)養護に関わるねらい及び内容
ア 生命の保持 (イ)内容

B清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して、子どもの生理的欲求を満たしていく。(略)
C(略)・・食事、排泄、睡眠、衣服の着脱、身の回りを清潔にすることなどについてこどもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。
イ 情緒の安定 (イ)内容
@一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。
(2)教育に関わるねらい及び内容
ア 健康 (イ)内容

E身の回りを清潔にし、衣類の着脱、食事、排泄など生活に必要な活動を自分でする。
G自分の健康に関心をもち、病気の予防などの必要な活動を進んで行う。
2 保育の実施上の配慮事項
(2)乳児保育に関わる配慮事項
ア 乳児は疾病への抵抗力が弱く、心身の機能の未熟さに伴う疾病の発生が多いことから、一人一人の発育及び発達状態や健康状態についての適切な判断に基づく保健的な対応を行うこと。
(3)3歳未満児の保育に関わる配慮事項
ア 特に感染症にかかりやすい時期であるので、体の状態、機嫌、食欲などの日常の状態の観察を十分に行うと共に、適切な判断に基づく保健的な対応を心がけること。
(4)3歳以上児の保育に関わる配慮事項
ア 生活に必要な基本的な習慣や態度を身につけることの大切さを理解し、適切な行動を選択できるよう配慮すること。
◎第5章 健康及び安全 
1 子どもの健康支援 (3)疾病への対応

イ 感染症やその他疾病の発生予防に努め、その発生や疑いがある場合には、必要に応じて嘱託医、市町村、保健所等に連絡し、その指示に従うと共に、保護者や全職員に連絡し、協力を求めること。また、感染症に関する保育所の対応方法について、あらかじめ関係機関の協力を得ておくこと。看護師等が配置されている場合には、その専門性を生かした対応を図ること。
2 環境及び衛生管理並びに安全管理(1)環境及び衛生管理
ア (略)…施設内外の設備、用具等の衛生管理に努めること。
イ 子ども及び職員が、手洗い等により清潔を保つようにするとともに、施設内外の保健的環境の維持及び向上に努めること。

4.その他参考

保育所における感染症対策ガイドライン(厚生労働省 平成21年)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf

喫茶店埋橋のつぶやき
テルマ・ハームス博士を日本の保育所に案内した時、「どうして子どもは、はなを垂らしているのか」と言っていました。言い換えれば、「どうして子どものはなを拭きとらないのか」ということでしょう。スケールでは即座に「不適切」の1の項目が「はい」になってしまいます。
ある保育所で、食事中、子どもが洟をたらしたまま、スプーンで食事を口に運ばれている姿を見ました。これではミックスされてしまうぞと思いながら見ましたが、気にならないのでしょうか?
日本の場合、厚生労働省の感染症防止のガイドラインに特定の疾病の病状としての「鼻汁」、通常の保育室にいる子どもについての「鼻水」の記述はあります。くしゃみとセットになって「鼻水が出る」と、「はなを垂らしている」のは微妙に違うような一緒のような・・・「はな(を垂らす)」に相当する用語としては「体液」なのでしょうか。ガイドラインにはこうあります。

<予防法>血液、体液、喀痰、尿、糞便等すべての湿性生体物質は感染性があるとみなして対応する方法です。医療施設で実践されているものですが、保育所でも実践すべき重要な感染症対策です。
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf
保育所に行くと洟を垂らした子どもをよく見かけます。「はなを垂らす」がなんだかノスタルジックな「子どもらしさ」があって許容されているのかな、と思いますがやはり好ましいものではないでしょう。
スケールには分厚い解説書がありますが、衛生面での手続きは食事や睡眠、排泄に関する他項目とともに写真入りで事細かに説明しています。とにかく衛生面では徹底的な対応を求めます。
別の観点の話題になりますが、アメリカは名うての「使い捨て」文明です。消毒のときはペーパータオルで拭き取って捨てる、食事のときもテーブルにシュッシュッと消毒液を吹きかけて(そのあと殺菌のために10秒は放置しないといけない)ペーパータオルで拭き取り、捨て、子どもの食器は紙皿にプラスチックのフォークやスプーンで食事が終わるとごそっと捨てる。だから黒のごみ袋がすぐにいっぱいになります。

食器を洗うなどして衛生的に保つ人件費よりはコストがかからないというのは理解できても「それでいいのか?」という疑問がわいてきます。「もったいない」じゃないか、という思いがふつふつとわいてきます。大切な食事はいい食器で、という「こだわり」はどこに行く?とも思います。

ヨーロッパではアメリカほど衛生について厳しい基準を求めません。あまり手洗いもうるさく(?)いいません。スウェーデンのある保育所で、カーペットの上にリンゴを滑らせて渡した光景を確かに見ました(上履きと下履きは区別していますが)。この話をアメリカ人にすると「信じられない〜」と身をよじって言いました。

アメリカでの衛生基準の厳しさは訴訟社会だからかも、とも考えたりします。予防策を徹底して講じ、これ以上のことは不可能であることが認められれば、子どもに感染症が発生し保護者に不利益が生じて訴えられても、負けることはないでしょう。もし自分が保育フランチャイズの経営者で、子どもの保護者に弁護士がいて、なんて場合は必死になるかも、と想像します。こわいよ〜がく〜(落胆した顔)
衛生基準も文化かも・・・悩ましいところです。

ひらめき保育環境評価スケール研究会のHPもご覧下さい。
ラベル:保健 感染 手洗い
posted by うずちゃん at 11:55| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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