2011年07月24日

保育環境評価スケール・項目解説 幼児版18「ふだんの会話」

埋橋玲子@保育環境評価スケール
項目解説/幼児版18「ふだんの会話」

1  幼児版18「ふだんの会話」について
この項目では、以下のことを保育の質として重要であるとしています。

―保育者と子どもの間には、伝え合ったり親しみあったりするための会話が多くある。
―子どもどうしの会話が多い。
―保育者と子どもの1対1の会話がある。
―保育者は子どもの考えを広げるような語りかけや問いかけをする。

背後にあるのは以下のような考え方です( All about the ECERS-R , pp177)。

一日を通して、言葉はいろいろに用いられます。慰めたり、知らせたり、指示したり、交わったり、苦情を言ったり、抗議をしたり、会話をしたり、交渉をしたり、疑問を示したり、予期したりなどです。保育者が意図的に言葉を発するのは、集まりや集団活動の時など、比較的短い時間に限られます。実際は、状況に応じて応答的に発せられる言葉のほうに多くの時間が費やされます。保育者が何気なく使っている言葉は、クラスの社会的・知的な雰囲気に大きく影響を与えるのです。

ここでは「ふだんの」という言葉の原語は「インフォーマル informal」で、「あらたまった、正式の」という意味の「フォーマル formal」に対する言葉です。保育場面に照らしていえば、ねらいを設定した活動のなかで保育者が意図的にクラス全体あるいはグループに対し意図をもって話しかけるのが「フォーマル」で、自由遊びの時や個別に話しかける時、あるいは日常的な場面で自然に、特に意図せず言葉を用いるのが「インフォーマル」です。クラス単位の活動が多くの時間を占めていると、なかなか個別的な語りかけや問いかけをするチャンスがありません。また、いわゆる「指示語」だけの保育では、インフォーマルな「ふだんの会話」は生まれません。

自由放任で保育者が関わることのない保育場面では、子どもどうしの会話は多くなるかもしれませんが、子どもと先生が関わり言葉を交わすことが少なくなります。子どもの様子をよく観察していないと、子どもの興味の方向や現在の状況が把握できず、会話の焦点が合わずに子どもの心に響かない語りかけになります。保育における保育者と子どもとの会話とは、社交ではなく、子どもが現在興味をもって打ち込んでいる活動に即して応答的になされるべきものです。保育者の言葉をヒントにより遊びが楽しくなったり子ども自身で新たな発見をしたりすると、喜びが生まれます。背景には多様な活動を生み出す環境が求められます。この「ふだんの会話」は特別な視点ではありませんが、この項目でハイスコアが出るには、多くの条件がそろっていないとなかなかむずかしいでしょう。

年長児は先生 異年齢のクラス。年長児がせんせいのまねをしている。

2.評定のポイント

保育者がどれだけ話しかけているかではなく、子どもの状況に応じたもの(ニーズにあっている)であるかどうかがポイントです。場面によって言葉の状況は異なりますので、すぐに判断をしないで観察を続け、評点をつけるのは観察時間の終わりの方にする項目です。

3.幼稚園教育要領、保育所保育指針との参照
【幼稚園教育要領】
第2章 ねらい及び内容
人間関係 2 内容

E自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気づく。
言葉 2 内容
(1) 先生や友達の言葉や話に興味を持ち、親しみをもって聞いたり、話したりする。
(2) したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。
(3) したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
(4) 人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
(5) 生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
3 内容の取扱い
(1) 言葉は、身近な人に親しみを持って接し、自分の感情や意志などを伝え、それに相手が応答し、その言葉を聞くことを通して次第に獲得されていくものであることを考慮して、幼児が教師や他の幼児とかかわることにより心を動かすような体験をし、言葉を交わす喜びを味わえるようにすること。
(2) 幼児が自分の思いを言葉で伝えるとともに、教師や他の幼児などの話を興味をもって注意して聞くことを通して次第に話を理解するようになっていき、言葉による伝え合いができるようにすること。

【保育所保育指針】
第3章 保育の内容 
1 保育のねらい及び内容 
(1)養護に関わるねらい及び内容 イ 情緒の安定 (イ)内容

@ 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。
(2)教育に関わるねらい及び内容 
イ 人間関係 (イ)内容

E自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気づく。
エ 言葉 (イ)内容
@ 保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする。
A 保育士等と一緒にごっこ遊びなどをする中で、言葉のやり取りを楽しむ。
B 保育士等や友達の言葉や話に興味や関心を持ち、親しみを持って聞いたり、話したりする。
C したこと、見たこと、聞いたこと、味わったこと、感じたこと、考えたことなどを自分なりに言葉で表現する。
D したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
E 人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
F 生活の中で必要な言葉がわかり、使う。
2 保育の実施上の配慮事項
(1) 保育に関わる全般的な配慮事項
ア 子どもの心身の発達および活動の実態などの個人差を踏まえるとともに、一人一人の子どもの気持ちを受け止め、援助すること。
ウ 子どもが自ら周囲に働きかけ、試行錯誤しつつ自分の力で行う活動を見守りながら、適切に援助すること。
(3) 3歳未満児の保育に関わる配慮事項
エ 子どもの自我の育ちを見守り、その気持ちを受け止めるとともに、保育士等が仲立ちになって友達の気持ちや友達とのかかわり方を丁寧に伝えていくこと。
(4)3歳以上児の保育に関わる配慮事項
キ 自分の気持ちや経験を自分なりの言葉で表現することの大切さに留意し、子どもの話しかけに応じるよう心がけること。また、子どもが仲間と伝え合ったり、話し合うことの楽しさが味わえるようにすること。

喫茶店埋橋のつぶやき
いわゆる「一斉保育」が主で、「自由遊び」が従となっている保育では、先生は集団への呼びかけには熟達してきます。フォーマルな話し方は上手になり、集団活動を推進させる子どもの声をすくい上げる・拾いあげることは上手で、全体としては「楽しく」活動は進んでいきます。集団の中で声を上げて提案できる子どもは少数で、大概顔ぶれは決まっています。ベテランの先生はうまく活動内容を調整できるので、全体的にはみんなが「ついてくる」展開が可能です。経験が浅いと引っ張ることに精いっぱいになって、「ついてこれない」子どもは置き去りになるのですが、気を回す余裕もありません。子どもは小学校に入るまでに、すでに「皆でやっていることは自分には関係ない」という構えを学習してしまいます。
「やっぱり先生によるよね」とはよく言われる言葉ですが、子どもの立場からすればたまったものではありません。保育者の側は、ベテランであろうが新人であろうが、質が一定のレベルに達した保育を提供しなくてはならないでしょう。もし集団活動で「ついてこれない」子どもがいるとすれば、そのことに気づき、自由遊びのときに何らかのフォローをするとか、クラス単位ではなくグループ単位で活動を構成してみるとか、工夫をこらさなくてはなりません。
クラス単位の活動に長年慣れてきた保育者にとって、自由遊びで個別的な話しかけをするスキルが身についていないことは不思議ではありません。自由遊びとは子どもも保育者もフォーマルな活動から「解放」されて気ままに過ごすことではなく、集団活動との連続性をもち、相互に関連して子どもの経験を豊かにしていくものであるはずです。そのときのインフォーマルな会話は重要な役割を果たします。会話や言葉を生み出すのは子どもの思いや考えといった子どもサイドの要因であり、<活動のねらい>にもとづいた保育者サイドの要因ではないことが、保育場面におけるインフォーマル=ふだんの会話の持つ意義だからです。

ひらめき保育環境評価スケール研究会のHPもご覧ください。
ラベル:会話
posted by うずちゃん at 06:13| Comment(0) | 会話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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