2011年07月30日

保育環境評価スケール/項目解説

埋橋玲子@保育環境評価スケール
項目解説/乳児版12「言葉の理解を助ける」Helping children understand language

1 項目「言葉の理解を助ける」について

この項目では次のことが保育の質として重要であるとしています。

−保育者は子どもに適切な話しかけをする。
−室内が適度に静かである。

背後にある考え方は以下のようなものです(All about the ITERS, pp155 )

(引用;)言葉を理解する力は後に言葉の使用につながります。0〜2歳の時期に、親や保育者といった子どもの身近な大人との意味ある社会的な関係の中で、この力は育てられていきます。今日では多くの子どもが保育所などで目覚めている時間の大半を過ごします。したがって、保育者は子どもの言葉を理解するための学びに重要な責任を負うことを心しておかなくてはなりません。

この項目は生まれてから生後30か月(2歳半)の子どもが話し言葉を理解し、聞く力を育てていくのに必要な、保育者と子どものやりとりの次のような重要な要素について評定していくものです。
・しばしば、そして個別的に子どもに話しかける
・あたたかい傾聴の態度を示す
・子どもに対しての話しかけは、全体としては励まし、認める内容である。
・声がよく聞こえるように適度に静かな環境である。
・子どもの分かる、的確でシンプルな言葉を使う。
・言葉が子どもにとって意味あるものになるように、日常のケアの時も遊びの時もまわりのものごとについて話しかける。
・言葉を使った遊びをしたり、子どもと言葉でのやりとりを楽しむ。
・多くの出来ごとや、子どもの感じたことや‘つもり’、物の名前や行動を含め、子どもの経験の異なる要素について話す。 (引用終わり)

<読み書き>ができること、そして<考えること=思考力>が生きていくうえで欠かせない能力であることを否定する人はいないでしょう。これらの力が子どもに十分につくことを願わない大人はいないでしょう。では、乳児の段階で、それらに結びつく行為とは何かと考え、そのための行為を大人が意識して行っているかどうかは別問題です。

抽象化された<文字>を使って読み書きができるようになる前に、具体的なもの・ことについて人が話すのを聞き、どのように<言い表されるか>を学びます。赤ちゃんはまわりのもの・ことがどのように言い表されているかを<聞く><聞いた音声を自分に起きていることと結びつける>ことを猛烈なスピードで行い、<言葉・言語>を習得していきます。音声言語はやがて内面化され、口には出さないけれども頭の中で言葉を使うようになります。これが考えるということです。もちろん<言葉・言語>は他の人とのコミュニケーションにも欠かすことができません。大雑把な表現ですが、自分の外に向かって発するときにコミュニケーションとなり、内で発するときに思考となるのです。この二つは別物のように切り替えられるものではなく、他の人と会話をしながら頭の中では常に得られた情報を自分の知っていることと照らし合わせ、組み替えながら、常に頭の中を「書き換え」ているのです。

このように複雑な人間としての行為の出発点は「聞く」ことです。自分に関係するものやこと、起きていることに対し、ジャスト・ミート(ぴたりと合った)の言葉を聞くことが、第一歩なのです。日常の保育場面とは、子どもにすれば自分にまつわるものやことが刻々と変化していくことです。そこに大人の言葉が伴うことで「気持ちが良い」とはこういうこと、「痛い」ってこういうこと、と脳にインプット(入力)=覚えていくのです。

食事のときの語り掛け 食事場面;日常の行為と言葉のつながりが重要

2 評定のポイント
子どもへ話しかける内容や声の調子は一日を通して変化します。メモを頻繁にとり最終的にそのメモを参考にして評定します。評価者は多くのことを観察しなくてはいけませんので大事なことを聞きのがすことがあります。そこで、30分に1回は集中してこの項目について観察を行います。このとき保育者と子どもの声が十分聞き取れるくらいの場所に移動し、注意深く、会話の内容、話題、使われている言葉の範囲、声の調子を記録しておきます。沈黙が多ければ、そのことを記録します。ときにはこの時だけ目をつぶって聞き取りに集中するのもよいでしょう。

3.保育所保育指針との参照   *乳児版ですので幼稚園教育要領との参照はありません。
 
第3章 保育の内容  1 保育のねらい及び内容 イ 情緒の安定 (イ)内容
@ 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。

喫茶店埋橋のつぶやき
まだ物言わぬ乳児の保育場面で、よく見かけることがあります。黙って食べさせ、黙っておむつを替えるという保育士の行為です。あるいは、食べさせるときに「もぐもぐね、かみかみね、おいしいね、ごっくん」という機械的な話しかけです。
黙っておむつを替えられていると、自分に何事が起きているのかを言葉にして頭の中にストックしていくことができません。成熟した大人は、このとき「いっぱいしたね〜きれいにしようね〜きれいになったね〜すっきりした〜」と「思わず」口にします。これだけのことですが、子どもがしたことを大人が肯定的に認め、それに対しての行為を伝え、結果を表現し、その状態に対する感覚を子どもに代わって表現する、これだけのプロセスが含まれています。その子の親なら「かわいくて」それをし、それをするから「かわいくなる」のです。世話をすることは、同時に世話をされる子どもの気持ちを味わえるから、嬉しくもあるのです。
では、なぜ黙っておむつをかえる保育士がいるのでしょうか。保育士の専門性はどこにあるのか、という問いにもなります。
親は、はじめは「替えなくては」という責任感から子どものおむつを替えるかもしれませんが、しだいに肯定的な感情が芽生えます。替えたら、きれいになり、「すっとする」快感が自分の喜びとして味わえるから嬉しくなり、それがおむつ替えという必ずしも快とは言えない行為を楽しくしてくれるようになるのです。子どもからの「ごほうび」です。それを受け取れることが親としての成長であり、人としての「自然」だといわれてきたのです。横道にそれますが、それが「自然」であり放っておいてもそうなるものではないのだということは、虐待という悲しい事実があることからもわかりますね。
保育士は親ではない。親に代わって「おむつを替える」のが専門性ではない。おむつを替える時に言葉を添えることの意味と重要性を認識し、それを行為に移すことができ、そのときの対象となった乳児に感情移入ができて喜びを感じ、他の人に向かって説明できて初めて専門性となるのです。最初は頭でわかっていても「替えなくては」「何か言わなくては」という義務感があるかもしれません。でも「この子が喜んでいる」と感じることができるようになれば、それが職業としての保育です。専門性に基づいた保育です。
乳児版、幼児版いずれを問わず、この言葉に関する項目が最もハードルの高い項目です。安全性や保健衛生の項目はたいていの園でクリアされています。活動に関してもおもちゃや教材をそろえれば確実にスコアはアップします。しかし、言葉に関する項目というのは保育者の認識があり、それに行為が伴わなくてはなかなか点が付きません。
でも点数としては同じ位置づけ・・・このあたりがスケールのパラドックス(逆説)なのかトリック(落とし穴)なのか。これもまた「評価」という行為の側面です。

ひらめき保育環境評価スケールのHPもご覧ください。 
ラベル:言葉
posted by うずちゃん at 04:58| Comment(0) | 言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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