2011年07月06日

保育環境評価スケール・項目解説

埋橋玲子@保育環境評価スケール
項目解説 幼児版16「コミュニケーション」

1.幼児版16「コミュニケーション」について

この項目では、以下の点を保育の質として重要であるとしています。

−コミュニケーションを促進する保育者の援助がある。
    (子どもの考えや思いを聞く、歌をうたう、わらべうたをする、手遊び・リズム遊びをする、言葉遊びをする、絵本を読む等)
−コミュニケーションを促進する遊具や教材、活動がある。
    (子どもが使える指人形やパネルシアター、ごっこ遊びの小道具、積み木遊びのときに使う人形や動物などのフィギュア、ゲーム)

背後にある考え方は次のようなものです。
子どもは、自分に必要なことやしてもらいたいこと、興味を、言葉で他の人に伝えなくてはなりません。言葉で表現できるようになると、他の人とアイデアを共有でき、効果的に問題を解決することができます。叩いたりする代わりに口で言えるようになるのは、社会性の発達の大きなステップです。言葉で自分のしたことの説明をしたり、質問をしたり、情報を共有することで、知的に著しく発達します。
子どもは楽しい、面白いと思えることがあるとそれを話します。ごっこ遊びやブロック遊びでいろいろなやりとりが起きるのを見ればわかります。いろいろな役割を演じて遊ぶときに、会話は弾みます。また、子どもは自分の言うことに興味をもって聞いてくれる人に対してよく話します。

コミュニケーションという英語の意味は、「伝達」とか「意思の疎通」というものです。単なる会話ではなく、これを幼稚園教育要領や保育指針の5領域の観点から見ると、いずれの領域とも関わってくることに気が付きます。子どもどうしの関わりが生まれるような遊具や教材などの物的環境を整えること、クラスやグループで子どもどうしがやりとりをするわらべうたなどの遊びをすることなど、自由遊びと集団活動の両方で子どものコミュニケーションを促進する手段が考えられます。
特にやりとりということを意識しなくても、楽しい経験をすれば子どもはその気持ちを外に出し、他の人に気持ちを伝えたり、伝えられたりするでしょう。そのことで楽しさがより増幅すれば、もっと話したくなるでしょう。

子どもの制作と先生 自由遊びで子どもが何か作っている時に話しかける(イギリス)

2.評点上の注意


子どものコミュニケーションを促進するような、保育者の実際の言動が観察されなくてはなりません。例えば自由遊びの時に子どもが作ったものについて質問をするとか、クラス全体で歌をうたったり手遊びをしたりするようなことです。
すぐに判断をしないで観察を続け、評点をつけるのは観察時間の終わりの方にする項目です。

3.幼稚園教育要領、保育所保育指針との参照


【幼稚園教育要領】
第2章 ねらい及び内容
健康 2 内容

(1)先生や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
人間関係 2 内容
(1)先生や友達とともに過ごすことの喜びを味わう。
(5)友だちと積極的にかかわりながら喜びや悲しみを共感し合う。
(6)自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
(8)友だちと楽しく活動する中で、共通の目的を見出し、工夫したり、協力したりなどする。
環境 2 内容
(9)日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心をもつ。
言葉 2 内容
(1)先生や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。
(2)したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。
(3)したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、わからないことを尋ねたりする。
(4)人の話を注意して聞き、相手にわかるように話す。
(5)生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
(6)親しみをもって日常のあいさつをする。
(8)いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
(10)日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。
表現 2 内容
(3)様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
(4)感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。

【保育所保育指針】
第3章 保育の内容 
1 保育のねらい及び内容 (2)教育に関わるねらい及び内容
ア 健康 (イ)内容

@保育士等や友達と触れ合い、安定感を持って生活する。
イ 人間関係 (イ)内容
@安心できる保育士等との関係の下で、身近な大人や友だちに関心を持ち、模倣して遊んだり、親しみを持って自ら関わろうとする。
D友だちと積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合う。
E自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
G友だちと一緒に活動する中で、共通の目的を見出し、協力して物事をやり遂げようとする気持ちを持つ。
I身近な友だちとの関わりを深めると共に、異年齢の友達など、様々な友だちと関わり、思いやりや親しみを持つ。
ウ 環境 (イ)内容
J日常生活の中で簡単な標識や文字などに関心を持つ。
エ 言葉 (イ)内容
@保育士等の応答的な関わりや話しかけにより、自ら言葉を使おうとする。
A保育士等と一緒にごっこ遊びなどをする中で、言葉のやりとりを楽しむ。
B保育士等や友達の言葉や話に興味や関心を持ち、親しみを持って聞いたり、話したりする。
Cしたこと、見たこと、聞いたこと、味わったこと、感じたこと、考えたことを自分なりに言葉で表現する。
Dしたいこと、してほしいことを言葉で表現したり、わからないことを尋ねたりする。
E人の話を注意して聞き、相手にわかるように話す。
F生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
G親しみを持って日常のあいさつをする。
Iいろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
K日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。
オ 表現 (イ)内容
A保育士等と一緒に歌ったり、手遊びをしたり、リズムに合わせて身体を動かしたりして遊ぶ。
D様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
E感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりする。
I自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりする楽しさを味わう。
2 保育の実施上の配慮事項(4)3歳以上児の保育に関わる配慮事項
キ 自分の気持ちや経験を自分なりの言葉で表現することの大切さに留意し、子どもの話しかけに応じるよう心がけること。また、子どもが仲間と伝え合ったり、話し合うことの楽しさが味わえるようにすること。

喫茶店埋橋のつぶやき
『環境評価スケール@幼児版』で、「16.コミュニケーション」の説明のところに例として固定電話を2台並べた写真を載せました。1台ではなく、2台あることで通話が成立する、という意図があったのですが、今やオールドファッション。電話の型が、という意味ではなくて固定電話があまり使われなくなった、という意味です。
今や電話と言えば携帯、携帯電話ならごっこ遊びで手ごろな積み木があればすぐに見立てて遊べます。気をつけてみれば子どもは結構携帯で会話してるかも…。
ごっこ遊びで、女の子がキッチンでお料理しながら赤ちゃん(人形)を抱いて肩とあごで携帯電話をはさんで誰かに電話している姿を見ました。きっとその女の子のママがそうしていて、恰好いいなあと思ったんでしょう。
保育所で使わなくなった携帯電話をおもちゃとして置いているところはよく見かけます。0歳のクラスに置いてあるのを見かけましたが、しきりと触っている子どもがいました。いつもはお父さんやお母さんに「触ったらだめ」と禁止されているのでしょう。そんな姿が見られたら、先生は別の携帯を手にとって「もしもし○○ちゃんですか」と話しかけてあげたらどうなるかなあと思います。そのうちスマートフォンのお古が保育室に入ってきたらどうなるだろう…。

ひらめき保育環境評価スケール研究会HPもご覧下さい。
posted by うずちゃん at 22:02| Comment(0) | 保育環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月04日

保育環境評価スケール項目解説・幼児版15「本と絵・写真」

埋橋玲子@保育環境評価スケール
項目解説 幼児版15「本と絵・写真」

1.幼児版15「本と絵・写真」について
この項目では、以下の点を保育の質として重要であるとしています。

−絵本が種類・量ともに多く、子どもが好きな絵本を選べる。
−絵本以外に子どもの使える言語教材がある。
−1日に1回は保育者が主導する言語活動がある(読み聞かせ、パネルシアター等)。
−保育者は個人あるいは小グループで子どもに読み聞かせをする。
−現在の活動テーマに関係した絵本などがある。

背後にある考え方は以下のようなものです。
幼児期に本が好きになることは、生涯にわたって読んだり書いたりすることに影響を与えることになり、そのために保育者の役割には大きなものがあります。保育者は計画的に本の読み聞かせを行うだけでなく、保育場面で子どもの活動に応じて関係のある本を読んだり、小グループでやりとりをしながら読んだりすることで、本を読むことが一人一人の子どもにとってより身近なものになります。本を読むことは楽しい経験でなくてはなりません。子どもが扱えるパネルシアターなどの言語教材があると、言葉を操る楽しさを経験できます。

7月の絵本 7月の絵本棚

つばめの絵本 ツバメを見に行ったとき、記録をツバメの絵本とともに展示

2.「本と絵・写真」の評定のポイント

5.1の「1日の相当の時間」とは、スケールで全保育(開園)時間の3分の1以上の時間を意味します。午前7時に開園し、午後7時に閉園するのであれば、12時間の保育時間であり、その3分の1は4時間ですから、この場合は4時間以上のことです。
全保育時間を園で過ごさない子どももいますが、開園時間を基準にして計算します。

3.幼稚園教育要領、保育所保育指針との対照

【幼稚園教育要領】
第2章 ねらい及び内容/言葉
 
内容(9)絵本や物語などに親しみ、興味を持って聞き、想像をする楽しさを味わう。
内容の取扱い(3)絵本や物語などで、その内容と自分の経験とを結びつけたり、想像をめぐらせたりするなど、楽しみを十分に味わうことによって、次第に豊かなイメージをもち、言葉に対する感覚が養われるようにすること。

【保育所保育指針】
第3章 保育の内容 1 保育のねらい及び内容
(1)養護に関わるねらい及び内容 イ 情緒の安定 

(イ) 内容 @ 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。
(2)教育に関わるねらい及び内容 エ 言葉
(イ) 内容 J 絵本や物語などに親しみ、興味を持って聞き、想像する楽しさを味わう。

喫茶店埋橋のつぶやき
英米の保育室を訪ねると、絵本のセンターにポスターが貼られていて、読書の大切さを子ども自身や保護者に訴えていることが珍しくありません。それに比べて、日本ではそのような「読書環境」を子どもに積極的に用意しているとは思えません。
「読書は楽しい、だから子どもにもその楽しさを教えよう」と保育者自身が思っているかどうか。保育室の絵本棚を眺めると、そのクラスの先生が本好きかどうか一目瞭然です。ときには、無造作につっこんであったり、破れていても気にしていなかったりする先生がいます。破れた本がいつまでも放置されていると、「ものを乱暴に扱っていいんだ」と子どもに教えているようなものであり、「自分には破れた本で十分なんだ」と思わせているようなものです。
なぜ読書は楽しいか。それは「今、ここにいる自分」が時間と空間を超えて、遠くにいる人歴史的な人を含めいろいろな人に出会い、未知の事物に出会わせてくれる喜びがあるからです。物語の中の主人公と自分を同一視して、実際の生活では味わえないような経験をしたり、感情を味わったりすることができるからです。楽しい気持ちだけではなく、つらい気持ちや悲しい気持ちを主人公とともに味わい、わかちあい、自分の慰めと励ましにできるからです。精神の自立とはそういうことでもあるのではないでしょうか。
だから保育室の絵本も多様なジャンルから揃えておくことが必要です。物語絵本だけではなく、図鑑、絵の本、写真の本・・・、物語にしても、日本のもの、外国のもの、昔話から創作もの、伝記ものと。
子どもをよく観察し、今のその子どもが必要としている「本」に出会わせることも保育者の大切な役割でしょう。知りたいことが載っている本は、魅力的なものです。子どもは、「知りたかったら、本を開けばいいんだ」と学ぶでしょう。さびしかったり悲しかったりという気持ちの時は、同じような気持ちをもった物語の主人公に出会わせると、次からひとりでもその主人公と友だちになれるでしょう。
でも絵本で説教したら逆効果だし、底の浅いみえみえの絵本をおくのは芸がない。本選びは保育者の腕の見せ所かな。

ひらめき保育環境評価スケール研究会のHPもご覧下さい。
ラベル:絵本
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2011年07月03日

保育環境評価スケール・項目解説

埋橋玲子@保育環境評価スケール
幼児版「言語−推理 Language -Reasoning」
乳児版「聞くことと話すこと Listening and Talking」


この大項目は、乳児版は以下3、幼児版は以下4の小項目で構成されています。


幼児版 
15.本と絵、写真
16. コミュニケーション
17.推理スキルのための言語使用
18.ふだんの会話

乳児版
12.言葉の理解を助ける
13.言葉の使用を助ける
14.絵本の使用

幼児版<15.本と絵、写真>と乳児版<14.絵本の使用>は、次の大項目「活動」に組み込まれてもよさそうな項目ですが、特別にこのグループの中に置かれています。
その理由は、絵本などを読んでもらったり、自分で本や絵、写真を見たりすることが、聞く・話すに始まる言葉の発達と深くかかわっているからです。そして、言葉の発達は、考える力、読み書き能力、コミュニケーション能力と密接につながっています。


 幼児版の「言語−推理」というタイトルがわかりにくいかもしれません。言語はともかく、「推理」とは?「推理小説」ではものごと(または、人)とものごとの関係を丹念に突き詰めていきますね。ここでいう「推理」もそのようなことで、ものごとの関係を正確に把握する、と言ったような意味合いです。論理的である、ということです。身の回りに起こったことについて、「〜だから・・・だ」とそのつながりに気付くことです。そうすれば、「筋道をたてる」ことができ、「見通しをもつ」ことができます。「きまり」に気付き、守ることも、なぜそうするのかが理解できていないと身には付きません。

0歳の段階で「聞く」ことから始まり、次第に「話す」ようになり、絵本などにより「描かれた・書かれた言葉」に親しんでいきます。他の人から「話してもらう」、「聞いてもらう」、経験が「話す」「聞く」「人のことがわかる」「自分のことをわかってもらう」ことにつながります。身近な人との伝えあう・わかりあう経験が、(絵)本などに書かれた文字(絵、写真)を読み取ることで、今ここにいない人ともつながりを感じることへと発展していきます。

他の大項目では乳児版と幼児版の項目はほとんどが共通しますので、同じ項目のなかで一緒に述べていますが、幼児版の「言語−推理」および乳児版の「聞くことと話すこと」は別々に述べることにします。

園庭のベンチで絵本が読める(イギリス) 園庭のベンチで絵本が読める(イギリス)

喫茶店埋橋のつぶやき
前にも書いたことですが、どうして園では周りの子どもは皆「おともだち」なのでしょう?耳触りがよく使い勝手がよいので、気をつけないと私自身が時折口にしてしまいます。そのときは、しまった、と思うのですけれど。
クラスの中にいる「自分」のまわりには他児=他の子どもがいます。みな「ともだち」ではないはずです。おとなの場合、自分の周りにいるのは皆「友人」ですか?「同僚」であり「知人」ではあっても「友人」ましてや「親友」とは限りません。気が合って心が許せる好きな人、少々失敗しても許してくれるあるいは反対に許してやれる人、それが「友人」といものではないでしょうか。でも、社会とは友人以外と付き合っていかなくてはならないところです。
同僚に対しては、たとえ虫が好かなくても(時には嫌いでも)その場の(たとえば職場)目的や目標を共有するのが社会人です。嫌いな人とも穏やかにつきあうために、ルールやマナーがあります。
4月の初めには「クラスにいる他の子ども(人)」が、いろいろな経験を共にしていき、3月には「ともだち」になった、というのなら話はわかります。集団作りというのはそういうことかもしれません。それは最初から「皆ともだち」と言いくるめてしまう(?)ことからは始まらないでしょう。
言葉は正しく使いたい、論理的に考えたいと思います。そして合理的に行動したいと思うのですが・・・言葉は生き物、といいます。意味や使われ方はどんどん変わっていくものです。では園での「ともだち」とは?ひょっとして「何も一緒にしたこともなく、どんな人かわからなくても、とりあえず仲良しという前提に立って接することが先生から期待される他の子ども」ということでしょうか。難しすぎる・・・ふらふら
posted by うずちゃん at 09:39| Comment(0) | 乳児保育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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